AKIRA

赤いバイク
赤いツナギ
魅力的な16歳。



大友克洋の代表作をこの年になり初めて読んだ。
FREEDOMという作品で大友作品に触れた私にとって、AKIRAという漫画を読むことはまるではるか昔の先祖に会うような気分でした。



まず、わたしがAKIRAを読む前のイメージを述べます。遠い昔のことだから正確にわからないけど、あの爆発のイラストと赤い「アキラ」の文字が当時の私には怖くて、子どもが読むべきものではないと思ってました。



そもそも、漫画の初版が私の生まれる前。1984年。
1984年といえば、私にとってオーウェルの作品が思い浮かぶ。
オーウェルから見たはるか遠い1984年は完全な統治社会。
私から見たはるか遠い1984年は冷戦真っただ中の想像もできない社会。
具体的的にどんな年かといえば、オーストラリアから日本に初めてコアラが贈られた年でもあり、夏季・冬季オリンピックが開催された年でもある。



AKIRAの世界でも、オリンピックが一つのキーワードとして出てくる。
第三次世界大戦後の廃墟と化した場所で、オリンピックを開催する意味。
確かに国際オリンピック委員会は好きそうなセッティング。



AKIRAも一気に6巻まで読んだけれどスケールが大きすぎて途中読み返したり、ゆっくり読んだり、想像力フル回転させて読んだり。
それでいろいろ感じたのは、私ががこれまで見てきたアニメにどこかしらひっかかるものがあるなぁ〜って。
ネオ東京の設定はエヴァンゲリオン第三新東京市
パワー全開になるとオールバックになる鉄雄はまるでドラゴンボール
チルドレンの超能力、まるでハンターハンターの念能力。
月にまで飛んでく鉄雄はまるで・・・セーラームーンのよう。(違うかw)

読んでるごとに、その味がじんわり浸み出てきて手から溢れるぐらいにたくさん。
たぶん、まだわかってないところもたくさんあるはず。


自分の中に持ち合わせている知識そのものは、とてもとても貧弱だけれども、そうした持っているものが繋がる感覚はとても楽しくて、何物にも代えがたい。







金田の男気。いいよね。覚悟が決まってく目つきとその雰囲気。
5巻のケイとのやりとり、めっちゃかっこよかった。
あの瞬間は惚れた。「これ、16歳じゃないよ、絶対」という揺らぎない思いも同時に抱きながら。


それにしても”男臭い”
女受けはしないだろうなぁ。
イケメン?美人?出てこないし。
大友さんもそういう人物描写、意識して書いてたらしいね。
そのあたりは初期のナルトっぽい感じがした。岸本さんもあの作品を世に送り出す際に編集者から結構言われたらしいけど、別にかわいい女の子はいらないとか書けないとかいいながらヒロインのサクラ書いてたらしい。実際、サクラはジャンプコミックのヒロインとしては、普通の女の子のイメージ。それが今やあのヒットだから、ね。



大友さんの画力は凄まじい。
母艦の上で鉄雄とケイが対峙するシーンで、鉄雄が煙の中から登場するあの左ページの上!(笑)
もうどんなふうに書けばいいのか計算なのか、直観なのかわからないけど、はずさない。あのシーンは、5巻の金田とケイのシーン以来鳥肌でした。


その画力がアメコミやバンドデシネから学んだというところも、また面白い事実。日本のアニメ、コミックスが国内だけで成長してきたわけじゃなく、やっぱり海外のものも取り入れて、これだけ大きくなったんだ。それが知れただけでも、嬉しい。



また画力関連で行くと、そのデザイン力もまた凄い。
バイクかっこいいね。ビックスクーターもその影響下にあるという話もあるらしく、びっくり。いわれてみれば、確かにそうだなーと。
そして、やっぱりリーダー(主人公)は赤を身にまとう。
赤色はあの漫画では象徴的な色かもしれない。
時に鉄雄がマントとしてはおるのも赤に近い布切れだよね?
その時々で「主役はこの人だ」という暗示なのだろうか。
考えすぎだろうか。


そして最後にいいたいのは、私が育ってきた環境・見てきたものはすべてAKIRAの影響下にあるものが多かったということ。
もちろん、今回この漫画を読んで新しく感じたことも多々あったけど、それ止まり。

これが出た時の衝撃を感じることができないのが残念でもある。
ブレードランナーにせよ、AKIRAにせよ、世間がもっていたある種の固定観念を打ち壊す瞬間があったはずなんだけど、今となってはそれはあたり前として目の前に存在している。
人それぞれ個性の違いがあるから、もちろんそれぞれの固定観念を打ち砕く瞬間って毎日のようにあるはずなんだよ。
でも、人間が、社会がほぼ同じように感じていること、思っていること、表現していること、そういう共通認識が打ち壊されるのってとってもパワーがあることだと思う。つまりそれが衝撃なんだよね。


打ち壊すのも相当なパワーが必要だけど、この漫画にはそういう力があったんだね。こんな作品が今から25年以上も前に出てたなんて、ある意味衝撃的です。



ちなみに、ちょうどいとこが2003年生まれ。
私の記憶が間違ってなければね。ちょうど金田と同い年。
妹弟、従姉弟と90年代、00年代に生まれた彼らが、
まさか今読んだコミックの世界に生きる若者とそう変わらない時間を歩むとは。


面白い。