本屋のはなし

街というのは常に変わる。
昨日まであった空き地、ため池、砂利道。
気が付けばいつの間にか消えている。


つい先日、地元の大きな本屋が閉店した。
20年間の営業を終えてのことだった。

子どもの頃、漫画の新刊が出れば、
小遣いを手にいそいそと買いに行った。
お年玉が出れば、好きな図鑑を買いに行った。

受験が近づけば、参考書を買ったりもした。


大学生になって、そこで働くことになった。
ミスも多かったし、接客もあまりできなかったけれど
働く人たちがとても素敵だったから続いた2年間だった。


働く中で、SFの世界を知り、
映画の面白さを再確認した。
教えてくれる人がいたからこそ、知れた世界だった。


まさかはまり込むと思わなかった世界に、
どんどんと嵌っていって、
気が付いたら好きになっていた。




今回なくなってしまった本屋は、
幼いころから傍にあって、
大人になっても常に新しい何かを提供してくれていた。

当たり前にあった空間がなくなるというのは、
自分にとって第三者的な存在であっても
悲しみや寂しさはぬぐえない。

改めてこの本屋の存在を考えてみると、
本という様々な文化の入り口、
文具という様々なデザインの結集。
そうした面白く、変わっていて、楽しい世界を教えてくれた場所だったように思う。




好きだった本屋が無くなるというのは、
好きだった人ともう会えないようなものに近い。


もうきっと会うことはないだろうけれど、
また言葉を交わせる日が来たら、
私の知らない本や映画の世界を教えてほしいと思う。


20年間、お疲れさまでした。