エリジウム

その重篤な病の体で良く動けますねぇ


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2154年。限られた富裕層の者たちは汚れを排除したスペースコロニーエリジウム”に、その他の者たちは地球に住んでいた。
人口過密となった地球は荒廃しきり、犯罪と貧困がはびこっていた。

マックス(マット・デイモン)も犯罪に手を染めては留置所送りになっていたが、この繰り返しを断ち切るべくアーマダイン社の工場で働き始め、組立ラインに従事する。


更生したかに見えたある日、事故が彼を変える。


なんとしてでもエリジウムに行かなければならない理由のできたマックスは潜入を試みるが、彼の前に、不法入国者からエリジウムを守るデラコート高官(ジョディ・フォスター)が立ちはだかる……。

http://movie.walkerplus.com/mv50853/
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ジョディ・フォスターを包む衣装はアルマーニでした。
かっこいい。

しかし、許容値越えの放射線を浴びながらも、強力な薬で体を保つとか
「何言ってんだ。主人公補正も大概にしろ」と思ったりもして、
それって物語を進める上で致し方ないわけなんだけど、
薬によって動く体から湧き出るあの体力と気力は文句をつけたくなるw
マット・デイモン、いろんな意味で強すぎ。



今回の映画も前作「第9地区」の時のような、またインパクトある映画作ってくれました。
やはり前作の時のように、映画館で一人置いてけぼりでした。
ストーリーについていくので精一杯だったのが本音。


エリジウムという天界のユートピアに、地球という下界のディストピアの住人が移住にしたいなぁと願う思いが全面に伝わってくるところから映画が始まる。地球に住む人にとって、エリジウムって天国じゃなかろうか。

ただ健康に生きたいだけの人々(だと思ったけど、その他の目的の人っていた?)ばかりが
エリジウムを目指すというのもまたすごくメッセージが込められているというか…
前作が現代社会の制作や社会情勢に疑問を投げかける作品なためか、
そう見られても(見えても)いいように作られているというか。
「Elysium propaganda」で検索して出てきたいくつかの記事に目を通すと
社会保障制度改革だとか、移民制度の"reform"だとか言われてました。
確かにそう見える一面もあるよね。


しかし、ユートピアの世界も、不安要素を抱え込むと一気にディストピアに堕ちる。

”格差の無い社会は人々の協力体制を生まない”という記事をどこかで読んだけど、
この後のエリジウムや地球はいったいどうなるのか。
不老不死の命を得て、逆に絶望して死んでしまう人もいるんじゃないか。
終わりがあるからこそ、生きることは美しい。

でもそういう御託は生きることを楽しむ余裕がある人間のたわごとで、
生きることが苦しいと思う人間だってきっと世の中には多くいて、
そういう人々が望む幸せな世界って、きっとエリジウムのようなパーフェクトワールドなのだろう。
パーフェクトワールドにも闇はあります。



印象的だったのは映画の最後に、エリジウムが全ての人類に解放された瞬間。
この時、主人公は死んでしまう代わりに、全ての人間がエリジウム住民として承認される。
そのことに地球人はとても喜んでいるのだけど、
この「理想郷を目指して手に入れた全てが、自らの行為で崩壊していく感」がどうにも堪りません。


この後の世界も是非描いてほしい。
妄想に留めておくにはとても勿体ない。
ディストピア好きとしては、人々のユートピアに興味はなくて
ユートピアだと思っていた空間・場所・環境が実は強烈なディストピアみたいなのがいい。


エリジウムに住んでいた人々はこの時何を思ったんだろう。


いやぁ、鑑賞後の妄想が膨らむ映画はいい映画だと思うよ。



エリジウム
ELYSIUM
2013
ニール・ブロムカンプ