オーガストウォーズ

ロシア軍の全面協力が凄まじい



あらすじ
***
2008年8月。

クセーニアは、幼い1人息子チョーマとともにモスクワで暮らすシングルマザー。
彼女の目下の悩みはエリート銀行マンの恋人エゴールとの恋の行方だった。


息子にエゴールを新しい父親として
受け入れてもらおうと必死のクセーニアに対して、
両親の離婚に傷ついていたチョーマは、
空想の世界で自分だけに見えるロボットと遊ぶようになっていた。


そんなある日、クセーニアに、元夫のザウールから電話が入る。
軍人のザウールは南オセチアのシダモンタ村で平和維持軍の任務に就いており、
村の自然の中でチョーマとともに過ごしたいという。
しかし、国境近くに位置する南オセチアは、
いつグルジア軍が侵攻してくるか判らない危険地帯。

悩むクセーニアだったが、その間、
エゴールとバカンスを楽しむことができるという打算も働き、
ザウールの頼みを聞き入れる。


チョーマがシダモンタ村へ旅立った8月7日。
グルジア軍がオセチアに侵攻したというニュースが飛び込んでくる。
息子を救出するため、南オセチアに向かうことを決意するクセーニア。
現地では、ザウールがグルジア軍の砲撃によって死亡。
チョーマは戦場に1人で取り残されてしまう。


8月8日。
戦火を潜り抜けて息子の元へ向かうクセーニアだったが、
シダモンタ村に近づくにつれて戦闘は激化し、先に進むことができない。
その時、彼女の前にロシア軍の偵察部隊指揮官リョーハが現れる。
クセーニアの情熱に打たれた彼は、
部隊とともに彼女を息子のもとまで送り届けることを約束。
銃弾が飛び交う戦場を駆け抜けるクセーニア。

しかし彼女は、チョーマが目にした事態をまだ知らなかった。
そこは、巨大ロボットと軍用兵器が戦闘を繰り広げる、
常識を越えた戦場だったのだ……。

***

リョーハのできる指揮官ぶりは凄まじいっすね。
女子どもを守り、どんな任務もこなし、唯一の肉親である母をも想う…
これってロシア人が理想とする男性像なんじゃないんですか。


twitterなどでレビューを拝見していると
プロパガンダ映画だと言われたりしている。
ロシア軍全面協力だし、仕方ないだろう。

そんなこと言ったら
日本人が大好きな「海猿」だって
ある種プロパガンダである。


そういうことを言い始めたら
どうしようもない。



映画の中でひときわ目を引いたのが、
雄大で牧歌的な南オセチアの自然。
カフカースの山岳が、
劇中における戦争の最中で
「これは戦争映画だったっけ」と思わせる。
カフカース南オセチアはオセット人が多く住まう場所なんだが
日本になじみのあるオセット人は露鵬
※彼はロシア国籍のオセット人


続く市街地での銃撃戦あとに、
ふっと出てくる自然の中の小さな家(チョーマがいる家)の対比がなんとも。


突き抜ける青い空は高原特有の魅力。
バスで荒れた山道を走りながら
みんなで気持ち良さそうに歌う姿も
「いってみようか、南オセチア」と思わせる。

しかし、そのあと爆撃にあうので
とてもショックなシーン・・・


その次に、
思わず感嘆したのが
クレムリン内の国務室。
「なんだこれ。超カッコいいじゃん」

文化的な価値のありそうな壁画に囲まれた
ガラス張りの国務室(紛争が始まる前の会議室)。


あぁ、こんなところで
作戦執行してるんですか…

冷戦は終わったけど、
自国の軍需事情を見せつけるには
とってもいいですね。


人がどうとかストーリーがどうこうではなく、
舞台や背景のことばかり話してすみません。



中身はあるようでないような。
色んなものがすっごい詰め込まれてて、
いちいち心動かされては、
チョーマのファンタジーと戦争の、
両者のスケールのでかさに驚いてしまう。

子どものファンタジーがリアルに被って、
リアルがファンタジーに救われて。
母子の絆と母の愛は偉大です。


それにね、ロシア軍総協力の戦車や武器が
また一層かっこういい。
なんすか無反動砲って。
RPG-7かぁ…


全面ロシア側の良さを描くのかと思いきや
人間の心の優しさは国境や人種関係ないところも
描いていて、グッと心を持ってかれた…
あの演出はズルイ。


ロシアの本気がつまった意欲作でした。


オーガストウォーズ
AVGUST. VOSMOGO
2013
ジャニック・フェイジエフ