ザ・フライ

君たちは退化したんだ。
もう僕にとっては過去の遺物でしかない。


あらすじ
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物質移動と遺伝子組みかえの研究をしている科学者のセス・ブランドル(ジェフ・ゴールドブラム)は、エレクトリック展覧会の会場で科学雑誌の女性編集者ヴェロニカ・クエイフ(ジーナ・デイヴィス)と知り合った。


ブランドルは彼女を自宅兼研究室に招き、研究中のテレポッドを披露した。
テレポッドとは物質転送装置で、生き物の場合は解体と再生により遥か離れた場所に移動できるという画期的な発明だった。

ヴェロニカはスクープ記事にしたいと言ったが、発表するには早すぎるとして、ブランドルはそれを止めた。ヴェロニカは最近まで上司の編集長ボーランズ(ジョン・ゲッツ)と恋愛関係にあったが、ブランドルの真面目な研究態度に徐々に惹かれはじめ、やがてベッドを共にする仲になった。


テレポッドの実験は大詰めの段階を迎え、ヒヒを転送したが失敗し、ヒヒは肉塊と化した。その時、電子部品がブランドルの背中に突きささり切り傷をつけてしまった。数日後、ボーランズはテレポッドを記事にしてしまい、腹を立てたブランドルはテレポッドに入り自分の肉体を使って転送実験を行なった。

その時、テレポッドの中に蝿が1匹入ったのに気がつかなかった。転送は見事に成功したかにみえたが、その夜以降、ブランドルの生活と肉体に異変が生じはじめた。SEXが異常に強くなり、肉体の奥底から力が湧き上がってくるのがよく分かるのだ。

いつしか背中に受けた傷口から針金のように太い毛がはえ、プロレスラー並の大男と腕ずもうをやって腕をへし折った。ヴェロニカは恋人の異常に気づき、背中の体毛を医者にみせたところそれは人間の毛ではなく昆虫の毛との結果が出た。


ブランドルの魂と肉体は蝿との遺伝子の融合によって蝿男と化したのだ。歯が抜けはじめ、指の爪が剥れ、えたいの知れない液体を吐き出すようになった。ヴェロニカが妊娠していることが分かり、怪物の子が生まれるのではないかと恐れた彼女は産婦人科医(デイヴィッド・クローネンバーグ)を訪ね堕胎手術を行う決心をした。


それを知ったブランドルは病院を襲い、手術をとりやめさせた。その夜、ボーランズが銃を持ってブランドルを襲った。だが逆にブランドルの液体を浴びせられ、手と足を失った。

ブランドルは愛するヴェロニカと胎内の赤ん坊と一体になろうとして強引にテレポッドに閉じ込めようとしたが、彼女は激しく抵抗、死にたいという彼の望みをかなえるために銃でブランドルを撃ち殺した。


http://movie.walkerplus.com/mv3834/
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何やってんすか、監督。
産婦人科医の役で出てたなんて気がつかなかった…顔わからないから仕方ないけど。


クローネンバーグ監督作品は「スキャナーズ」に続き2作目。
グロテスクな描写を丁寧に描く作風に好感を抱く。

グロテスクというのは単に造形、表現上の気持ち悪さを描く側面もあるけど
それだけに留まらずに、ありったけのリアリティが反映されていることが多い。

この映画は、ある一人の男が実験によって
遺伝子レベルでハエと融合してしまったところから話が始まる。
遺伝子レベルでハエと融合して、
人間からハエに進化していく過程を描く。


ハエに進化、というのか、変化というのか。
その過程がとても気持ち悪い(褒め言葉)
最後は救いもないしね。


別にハエじゃなくても良かったと思うんだけど、
ありふれた日常に存在していて、
あまり意識にも留めないような生き物だからこそ、
現実的な話だなぁ…と妄想できる。


主人公を演じたジェフ・ゴールドブラムは、
私の中で「ジュラシック・パーク」や
ロストワールド」に出ていた
カオス理論を唱えるイアン博士でしかったため、
今回の役は大変新鮮だった。
あの頃の映画ではまだ若かったけど、
今ではすっかりおじいちゃん世代…


主人公は最後までヴェロニカをテレポッドに入れて
転送したがっていたけれど、なんでだろう。
仲間が欲しかったのか、子孫残し(繁殖)したかったのかな。
人間の姿を保っていたときは、
「君も僕のようにハイテンションになれるぜ!」のようなことを
言っていたけど、途中からそういう意味合いじゃなくなったと思う。

理由は何にせよ、あれが彼を生きながらえさせた要因の一つだろう。
執念で生きたハエ、いや男。


しかし、あれでヴェロニカが転送されていたら面白かったのにね笑


人間がどんどんハエ化していく過程も面白かったよねー!
映画の見どころ、一押しポイント!

退化してパーツがとれていくシーン、衝撃で絶句。
耳がとれたときは思わず叫んだ!
顎がとれたときは思わず「ひゅぅー」って唸った!!
吐しゃ物(胃液)で食物を溶かすっていう発想!!!
すごく気持ち悪い!!!!(賞賛)


でも、あれがハエじゃなくて、
例えばネコだったらどうなってたんだろう…

人がハエに進化するとこうなるのですか、と勉強になった笑





結局のところ
退化中の主人公は見た目が8割ゾンビ。









こうしたホラー映画って、
意外にお化けだけがそれを支えているわけじゃなくて、
マッド・サイエンティストたちもその一因なんだなぁ…と

最近になってこの手の映画を観るようになってから一段と強く思う。
お化けは苦手だけど、マッドなサイエンティストたちのお話は好き。
テキサスチェーエンソー的な凡人に見えて変人な人々の話も惹かれる。




ちなみにこの映画の音楽担当はハワード・ショア
今でこそ幅広い映画音楽を手掛ける方ですが、
この映画はちょうど彼のデビューごろと重なるのかな。
この映画のBGMもいい味出してる。




ザ・フライ
The Fly
1986
デイヴィッド・クローネンバーグ