エイリアン4

子エイリアンの純粋無垢な瞳と
ウィノナ・ライダーの透き通る肌はイコール。


あらすじ
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前作で溶解炉に身を投じたリプリー

200年後、エイリアンにお熱な科学者たちは船内に残ってた彼女の血液からクローンを作ってしまった。目的はエイリアンの培養。人間はリプリーのクローンからエイリアン(女王)を摘出し、繁殖をさせていた。そして、クローンリプリーが載った船には、コールたちがやってくる。目的はエイリアンの殲滅。

クローン・リプリー、繁殖されたエイリアン、コールたちのそのあとは一体どうなるのか。


エイリアンシリーズ4作目であり、最後の作品。

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ジャン=ピエール・ジュネ監督による作品は、これが初めて。それなのに、どんどんジュネ・ワールドに魅了されていって、映画が終わるころには大きなため息が出ました。久しぶりに映画を観たあとに満足感が込み上げてきた。


この監督が描く世界観はなかなか文章で伝えにくいのですが、目に見えない”恐怖”という感情を描くのがとても巧い。主人公たちの息遣い、カメラアングル、光の使い方、シーンの演出・・・どれも独特なんだけれど、違和感を感じさせないのが凄い。映画を観てると、どんどんその世界に取り込まれていくことが酷く心地よく感じる。


今回の作品ではリプリーがクローンとなり登場するけど、これまでのリプリーとは、また違った性格と能力の持ち主として出てくる。こういった形で登場させたことでこれまでとは違うリプリーとしてキャラクターに幅をもたせてるのも良いな〜と。4作も続けば、そろそろリプリーの無敵ぶりに飽き飽きしてくる頃。マクレーンは別として。


そしてもう一人の主人公、コール役を演じたウィノナ・ライダーも透き通った肌が素敵過ぎる。そしてコールの役どころが1〜3を観てきた観客の心をグワッと掴んでくれる。


当初、エイリアンシリーズを観始めた時に”きっとグロテスクなんだろう”と斜めに構えていましたが、1〜3は実際それほどでもなかったんだよね。でも、4ではグロテスク描写が結構あるので驚いた。

あまりグロテスクとは結び付かないが、コールのナイフがリプリーの手の甲を貫くあのシーンが結構好きでした。新リプリーがこれまでの彼女とはどこかが何か違うっていうのをはっきり見せつけてくれたし、コールという新ヒロインの性格やその存在意義をはっきり示してくれる。とても印象的なシーン。


ちなみに、この映画をベタ褒めしているつもりはない。でも、「楽しかった」「よかった」「面白かった」っていう気持ちがすごく強くて、作品はいいところをたくさん書きたくなる。この映画はどのシーンをとっても綺麗で、面白くて、印象深い。私自身、こういう作品を観たときの幸せ度が、また違う映画を楽しむ原動力になっている。



ストーリーでは、終盤の方に子どもエイリアンが登場する。エイリアンと人間のハーフ。エイリアンの子宮から生まれた子。この子の登場は、他のファンの人や観客はどう感じたんだろう。これは作品を観た人に是非とも聞いてみたい。


個人的には、この子エイリアンは凄く好きなクリーチャー。作り手の愛が凄くこもってるから。最初は見るに堪えないっていうか”エイリアンが妊娠?胎内で育て上げるっていうのは、種の進化的にOKなの?”などと異和感凄かったけどね。でも、子エイリアンの眼の表情が凄く豊かで、人間味が存分に浸み出していて、次第に好きになってた。


最後の子エイリアンが船外放出されるシーンなんかは、”これでもか!”というぐらい丁寧に丁寧に描写されてて、作り手の深い愛を勝手に感じてました。一瞬で消滅していたら、悲しさも愛しさも切なさも半減だっただろうね。でも、あぁいう描き方をすることで各キャラクターの気持ちを観客が共有できるようにしたんだと思う。例えば、リプリーの母としての想いとか罪悪感の芽生えとか。例えば、子エイリアンの怒りと悲しみとか。そこが凄いと思う。あえて観客が両社の気持ちを理解できるような時間を作ったというところが。




映画の最後で、地球到着のシーンが映し出される。眼ざめの悪い客に対して「長かった宇宙旅行も、もう終わりだよ」って丁寧に教えてくれる心配りが素晴らしい。この映画がとっても印象深いのは、作品と観客の心の動きがいつも一緒だからだと思う。



エイリアン4
ジャン=ピエール・ジュネ
1998