虐殺器官

こういうのスキ。


wikipediaよりあらすじ

サラエボが核爆発によってクレーターとなった世界。
後進国で内戦と民族衝突、虐殺の嵐が吹き荒れる中、先進諸国は厳格な管理体制を構築しテロの脅威に対抗していた。


アメリカ情報軍のクラヴィス・シェパード大尉は、それらの虐殺に潜む米国人ジョン・ポールの影に気付く。

なぜジョン・ポールの行く先々で大量殺戮が起きるのか、
人々を狂わす虐殺の器官とは何なのか?

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%99%90%E6%AE%BA%E5%99%A8%E5%AE%98



なんか上手く纏まってないあらすじ()



なんていうか、SFで、ミリタリーで・・・でもナイーブ。
血なまぐさい描写が多くて、本著最初の件とかは”プライベート ライアン”のオマハのリアルなグロテスクを髣髴とさせる文章表現でちょっと辟易。そのため実際に手にとってきちんと読むまでに相当な時間があったわけだが・・・


それはさておき、ちょっと間違うと中二設定のような感じのきわどい表現がこの作品を「リアルワールドとは違うんだ」と思わせてくれる一つの材料となってる。まず、この話をするには私がSFだと知らずに読んだことがこの感想を書いている理由なのだが・・・なんだかすみません。


例えば、主人公たちの装具や防具など。そこがサイエンス・フィクションだなーって凄く感じた。
人工肉生産とか、痛感をとってしまうスーツとか。

(こう考えてみると、だいたいのSFの設定は割と中二病的なのかもしれないなぁ。・・・スキだけど)


でも、出てくる人間は精神的に強かったり、ミュータントのような肉体を持ってるわけでもなく、むしろ私たちがそのままうつっている感じがした。


実際はページをめくっても出てくるのは男ばかりだし、一言で言うととてもむさくるしい。私は女だし、男の人に共感できるシーンはそう多くない。でもその男たちが、自己内省を行うような人たちばかりっていうのが凄く印象的で、そういうところがなんか似てるような気がして。自分が犯した罪の在りかっていうのかな、そういうのを探しているところとか。あぁ、うんうん、って共感して読んでいた。
そういうのは、男も女も関係ないのかなぁ。




そういうところの描写で、ナイーブな印象がついたのかもしれない。
強い軍隊にナイーブな心の人間というような、対照的な表現かな、とか。
(理解にかたよりがあるかもしれないね)




あと、読んでいて、どんどん設定が"the science fiction"になっていったところが個人的にとてもとても面白かった。


部隊の装備が出たところから、あーなんかゲームっぽいとか思いつつ、最後には人工肉製造工場とか出てきて・・・これはもうなんかSFやなぁと思いました。ここで初めて”あぁ、この作品は完全にパラレルだ”っていう認識が生まれた(遅い
個人的には人工肉製造工場のところや、その国家・国民の設定もっとkwsk^ω^って感じでしたが笑


利権まみれの独立国が生まれて、一部上流階級だけがRICHな生活してて、国民は鯨やイルカの内臓食って生活して・・・ってそれで国民の不満とかは解消されているのか。もともとが食糧に乏しい地域で、それすらも昔に比べたら良い食生活なのか・・・・こういうディティール気になってしまって。笑


眼球の毛細血管による認証とか、指紋認証とかある一定の範囲で実用化されているし、”マイノリティ・リポート”を見た際に受けた衝撃()のお陰か、この本におけるそうした描写では、自分の中でパラレルという意識が生まれたわけじゃなかった。





タイトルからして、最初は手に取るのがとても億劫になったし、
人によって”ホラー?”と勘違いされてしまうかもしれない本著。
(実際に人からそう聞かれたし、引かれたし。笑)



人に勧めるかどうかはちょっと悩むけど
私個人としては満足しています。
(オチについてはは議論したい。)



本著において、どの点でわたしがこの本の世界をパラレルだという認識が出来たか、というような構成になっておりますがご容赦ください。


それだけ引き込まれたってことで。



虐殺器官
伊藤 計劃/早川書房

http://booklog.jp/asin/4150309841