母なる証明

つらくなる。



あらすじ
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とある静かな町。漢方薬店で働く母は、一人息子のトジュンと2人暮らし。純粋無垢なトジュンの存在は、この上ない彼女の幸せだった。

ある日、トジュンが猛スピードの車にはねられる。幸い軽傷で済んだトジュンは、友人のジンテとともに逃げた車を追いかけ、乗っていた男たちを襲う。警察署。トジュン、ジンテ、車の男たちが捕まり、絞られていた。迎えに来た母は、息子を心配し、ジンテとは付き合わないように忠告する。

ある日、ジンテに待ち合わせをすっぽかされたトジュンが酔って歩いていると、1人の女子高生に出会う。声を掛けるトジュンだったが、返事の代わりに石が飛んでくるのだった。翌朝。ビルの屋上でその女子高生の無残な遺体が発見される。数年ぶりの殺人事件にいきり立つ警察は、大規模な捜査を展開。数日後、トジュンが名前を書いたゴルフボールが現場に落ちていたことから、容疑者として逮捕されてしまう。必死に弁明するトジュンだったが、早期解決を狙う警察によって、犯人にされてしまう。母も息子の無実を警察に訴えるが、全く相手にされない。


やむなく母は、自分で真相を突き止めることを決意。まず疑ったのは、事件当夜トジュンが会い損ねたジンテ。トジュンのゴルフボールの件は彼も知っていたからだ。ジンテの留守宅に忍び込み、怪しいゴルフクラブを警察に届ける。だが、それは凶器ではなく、却ってジンテとの関係を悪化させてしまう。だが、ジンテとの会話で事件についての疑問が生じる。死体を隠すなら埋めるのが普通だが、女子高生の遺体は、これ見よがしに屋上に置かれていた。しかも、彼女には以前から色々な噂があった。

彼女を調べる必要があるのではないか?土砂降りの雨の中、遺体発見現場へ走り出す母。そこは町中が一望でき、遺体を隠すには目立ちすぎる場所だった。息子を救うべく、母は1人で走り出す……。
***

観てて居た堪れない。居た堪れないってこのための言葉か。ウォンビンがいい演技するよ〜と言われ続けて数年、やっと彼の映画を観れました。


最初は母の息子への深い愛、素晴らしき哉、良き哉などと思っていたのに。お母さんがおじさんを殺めてしまうシーンは深く衝撃を受けた。でもその行為は、自分が”良き哉”と思っていた愛がもたらした結果だと思うと、なんとも言えない。愛する気持ちに正しいも悪いもないのに、行動に移してしまうことでその判断が他者によって為されてしまう。もちろん人を殺めてしまうのは人として論外だとしても、お母さんにとってはそれも”愛”を具現化したのにすぎない。しかも、その判断(事実)が後に間違っていたことが判明したときは・・・お母さんの心が解るようになって、殺人をして、真犯人がわかって・・・観ている人は「何と言ったらよいのやら」という気分になるはず。解れてしまった糸は、切り取るほかない。切り取ったはずの糸なのに、愛息子が切れた糸持ってきちゃうし。



最後、祈祷院の真犯人と面会しているとき、お母さんがうつむくところでガラスに真犯人の顔が反射して映るのよね。そのとき、犯人もうつむいている。彼は一体何考えたんだろう、監督は彼に何を考えさせたんだろう。



母なる証明
原題:MOTHER
公開:2009
監督:ポン・ジュノ