フード・インク

久しぶりにパンフレット買いました。




あらすじ
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第82回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門ノミネート作。

体に良いとされるオーガニック・フードとスーパーに並ぶお手ごろ価格の食品との価格差はなぜ生じるのか?

そんな身近な疑問から、アメリカ国内における巨大化した農業市場の問題、そして、大量消費・大量生産される“食”の知られざる裏事情に迫っていく。

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これまで、食糧問題関連の映画をそれなりに見てきた。その中で、この作品は一番含みもあって、伝えたいことが伝わってきやすい映画だった。食糧問題が抱える、フクザツに絡み合った個々の問題を体系的・・・いやテーマごとに区切って纏めあげていた。それが私としては見やすかったし、テーマを出してくれることで「あぁ、こういうこと伝えたいのね」と頭を整理しながら見れた。



2時間という時間の中で、工業化した農業、小作農化する農家、遺伝子組み換え問題、生物多様性の喪失、食肉生産の実態とそれに関わる労働者の社会的問題等々がギュっと詰まったかんじ。


今まで見てきた関連映画をざっとあげると・・・

"いのちの食べ方"・・・農業が工業化してしまっていることに警鐘を鳴らす。(ドイツ・オーストリアの映画でした、ごめんなさい)


"ファーストフード・ネイション"・・・アメリカで実際に起こっているファーストフードの生産流通の実態を、ドラマチックに描いている。


”暴走する生命”・・・遺伝子工学によって生き物を人間に都合の良い食糧に変え、その上で生命に特許をかける企業の姿と遺伝子組み換えされた生命の姿を映している。


”パーシー・シュマイザー モンサントとたたかう”・・・種子メジャーにより生産から供給まで支配されつつある北米の農作物と農家のリアルを映している。


ざっとこんな感じ。あとは「スーパー・サイズ・ミー」とかも入ってくるか。とりあえず、自分が観てきた映画はこの通り。「S.S.M.」に関してはファーストフードが人体に及ぼす影響を示している作品といえばいいのかな。


上記5作品はそれぞれが食糧問題に関わるトピックでありながらも、伝えたいテーマがちょっとずつ違ってきた。だから、この上記の中の1本を見て「これが今のアメリカ人(先進国の人々)が抱える食糧問題だ」っていうのは概ね当たっているけど、間違ってもいると思う。


で、今回「フード・インク」を観て思ったのは、(繰り返しになるけど)今現在の”食糧問題”を上手く包括して示しているなぁということ。この私たちの生活が成り立っている”カラクリ”を家畜・農作物(コーン・大豆)をメインにとりあげていたのも個人的に良かった。映画を観ていて『このトピック(テーマ)についてもっと切り込んでよ、物足りないよッ』という人は、各々のトピック&テーマ沿って作られた映画を観るべし。


それと、この映画を観て初めて、世界の食糧はコーン(とうもろこし)と大豆、あとは牛・ブタ・鳥の精肉でまわしていることがよくわかった。映画観ながら、また『ソイレント(ソイレントグリーン)もあながち夢幻ではない』などと妄想にふけっていた。笑


そう考えるとますます種子メジャーのしていることが途轍もないことだと判った。うん、食糧支配か。『あーまたソイレントだよーーーー』と一人でニヤニヤ。あの映画も結局米国全ての農地を企業が買い上げ、ソイレント生産のための大豆だけ育ててる〜っていう・・・ってよくよく調べたら、ソイレントの語源は確かに大豆だけど、映画の中でのソイレントの原材料は海洋性たんぱく質だった。なんという勘違い。ホラ吹きで申し訳ありません。でも確かに農地買い上げしてたんだよなぁ。ハイクラスへの野菜支給だったかな、観なおす必要がありそう。。。ソイレントを引き合いに出すのに間違った情報はもう流せない・・・。



話が大幅に逸れましたが、”食べること”に関わる問題は、実は”生産と消費のサイクル”だけじゃなくて、もっと広範囲で、複雑で根が深くって、もう二進も三進もいかない状況になっているという現実。



自分が食糧問題に関心がある大きな理由は、動植物の多様性への関心からきてる。健康被害、労働者・企業間の社会問題も確かに大きな課題ではある。だけどそれ以上に、”人間のための””企業のための””利益のための”食肉/農作物生産の現場や実態がどしても許せなくて、映像を見るたびにやるせなくなる。なぜなら、自分もそれを助長するサイクルに乗っかってしまっているから。いつか降りなきゃいけないと思いつつ、何も行動に移せてないんだもん。なんだかな、って思うよね。



そしてやっぱり”生産⇔消費”のサイクルを動かしている力は強大で、簡単にブレーキがかからないことが毎回良くわかる。指をくわえて、自分が世界が自然界がジワジワ害されていくのをキミたちは待ち望んでるの?っていう問題提起。もう出来上がってしまった世界を壊すのは並大抵ではない。こういう場合に良かれと思ってやったことって、誰かの不幸につながってる。(そもそもそういう社会になってしまったのは何故なんだーっていうのはまた今度。)



まぁ過剰だとか、視点が多角的じゃないとかいろいろ意見もありそうですが、この映画が映しているものは、紛れもない現実世界の一部であるということがおぞましい。








”We can change the world with every bite.”
改めて、責任は自分の行動にあるんだな、って。





フード・インク
原題:FOOD, INC.
公開:2011
監督:ロバート・ケナー




omake
ちなみに、映画「ファーストフード・ネイション」の原作「ファストフードが世界を食いつくす」を著したエリック・シュローサーが出てる。