暴走する生命-Life running out of control.-

現存する生物多様性の保護。
直面する人類の食糧危機。


交差する二つの課題。



あらすじ
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遺伝子工学の発達と共に1980年代半ばから、植物・動物、そして人間までも遺伝子的に操作する動きが加速してきた。“何でもできる”と。

巨大多国籍企業は、あらゆる分野の遺伝子に注目し、これに特許をとり、特許製品を開発してきた。農産物、家畜、魚、医薬品・・・

しかし、インドでは遺伝子組み換え綿(GM綿)が悲惨な収穫をもたらし、借金を抱えた農民達は土地を手放すか、自分の腎臓を売るか、自殺に訴えなければならなくなった。

カナダでは、GM菜種の種が隣接する農家の畑に飛ばされ、有機農業ができなくなった。GM鮭の販売も近い・・・

種子に、生命に、特許をとる多国籍企業
彼らの「生命支配」に対して農民や消費者・市民は―。
http://www.bekkoame.ne.jp/ha/kook/liferunning.html
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”生命は誰のものであるのか”

遺伝子工学+遺伝子組み換え技術が社会と生態系に与える影響について纏めたドキュメンタリ映画。



ここ数年で急増する多国籍企業による遺伝子組み換え作物の普及と特許申請が、社会や環境のどのような影響を与えるのか、その現状や結果、これからのことなどを映し出している。特に、”生命は誰のものであるのか”といった大きなテーマを背景に、世界の作物(農作物)生産・供給を見ていく。この中で”食糧問題”と”遺伝子組み換え技術(遺伝子工学)”に関わる問題が果てしなく大きく、そして複雑であるという現実が動かぬ巨石のような重さで個人個人に圧し掛かってくる。



GM作物問題の話をすると、「GM作物の何が悪いのか?」という顔をされる。そもそも、GM作物とは、遺伝子組み換え技術(遺伝子工学)により従来とは別の特徴を持った生命体のことを言う。そしてGM作物も含めた遺伝子組み換え技術を用いた生命体のことをGenetically Modified Organism(遺伝子的に装飾された有機体)といい、その略としてGMOという言葉が広く使われている。


日本では遺伝子組み換え作物(以下、GM作物)に関する問題はあまり大きく取り上げられてないが、GM作物が及ぼす社会的・環境的影響はとても大きい。特に、環境的影響は計り知れないパワーを持っている。インドでは、Bt綿といわれるGM作物が普及し、従来の綿との交配が進んだために遺伝子汚染が起こっている。



この映画ではそうしたGMO作物や遺伝子工学の技術が及んだ特許物が、社会・環境にどういった影響を与えてきたか、またこれからどういった影響を与えるかを世界各地の活動家、遺伝子工学博士などのインタビューを通じて明らかにしていく。ちなみに、”遺伝子工学が及んだ特許物”は、特にインドで問題になってるんだけど、そこら辺に生えている草(現地では重要な薬草)を多国籍企業が遺伝子操作で特徴の強い植物にマイナーチェンジしちゃうこと。それで、”これはうちの特許だから”と特許申請&使用料を求めることが問題になってる。現地の問題を日本に置き換えると、庭に生えている紫蘇の遺伝子に対して起業が特許をとり、「庭に生えているのではなくちゃんとスーパーで買って特許料を払うようにしてください」っていってるのと同じようなもの。あぁ、美味しい紫蘇のてんぷらが・・・(わかりにくい?w)


農家の自殺、臓器売買にまで及ぶ深刻な社会問題を引き起こしつつ、また一方では生態系の破壊という深刻な環境問題も起こしているGM作物とそれに関連する企業ら。生命はいったい誰のものなのか。遺伝子への特許で、その生命が全て企業のものになるべきなのか?食糧問題を解決するのは、本当にGM作物しかないのか?


もう始まっている環境汚染、社会問題、そしてタガの外れた歯車の回転。ただ不安をあおってるだけの映画ではなく、これから一人一人ができるACTを提示している映画でもありつつ、一人では解決できない問題の大きさを提示している映画もあります。


暴走する生命
原題:Life running out of Control
公開:2011(日本での公開) (2004/ドイツ/デンクマル・フィルム製作)
監督:ベルトラム・フェアハーク、ガブリエル・クリューバー

http://www.bekkoame.ne.jp/ha/kook/liferunning.html



*おまけ*

今年、名古屋で生物多様性条約に基づくCOP10が開催されました。しかしながら、「生物多様性」という概念についてキチンと述べられる人は少ないんじゃないかなと思います。かく言う私も最近まで「生物の多様性はどうして重要なの?」と聞かれたら答えられなかったなぁ。

ということで、
少しそれに関するお話をします。

生物多様性の定義では、

1.遺伝的多様性
2.種の多様性
3.生態系の多様性


と区別されます。「いろんな種類、生き物、生態(生き方)が様々あることは、それぞれに素晴らしい機能をもち、個性を持っていることに通じるわけだから素晴らしいことだ」という考え方。そして、人間は人間以外の様々な生物たちから恩恵を受けていて、そういう恩恵を生態系サービスといったりする。

その生態系のサービスも

1.供給サービス・・・食品や水といったものの生産・提供
2.調整サービス・・・気候などの制御・調節
3.文化サービス・・・レクリエーションなど精神的・文化的利益
4.基盤サービス・・・栄養循環や光合成による酸素の供給
5.保全サービス・・・多様性を維持し、不慮の出来事から環境を保全すること

の5つに分類される。

生物多様性の重要性の説明だけで、これだけ説明しなければいけない。それは、大きなくくりでしか捉えられない世界を説明するから細かい定義も必要になると考えてるから。


では、本題。
生物多様性が脅かされることにどんな問題があるのか。」

答えは一つではないのだけど、私の中で一番重大問題であるのが今まで保たれてきた生態系のバランスが崩れてしまうこと。それらが今まで保たれてきた自然界のシステムが一変してしまうことが一番恐れるべきことなのではないかと思う。しかしながら、他一般の考えとしては人間が生態系サービスを受けられなくなることがここ一番の問題として認識されている。例えば、医薬品の原材料が無くなるだとか、そういった話になっている。




全世界的に問題になっているGMO問題。日本ではほとんど報道されないけど、日本人のGM作物摂取量は世界一の統計が出てるほど、私たちの生活とGM作物は切っても切れない縁でつながっている。そうしたGMOも、また生物多様性を脅かす存在としてジワリジワリと世界に広がりつつ認知を広げている。日本の在来種もそのうちGM作物に汚染されると思う。事実、GM作物はすでに日本の土を踏んでいる。栽培が認められてないのも関わらず、船などから落ちた種(タネ)が自生しているのである。



ちなみに、GM作物による在来種の遺伝子汚染を”遺伝的汚染”といい、海洋への重油流出などによる化学的な生命体汚染を”化学的汚染”という。化学的汚染は、生命体一代で終わることが多いが、遺伝子的汚染は遺伝子そのものへの汚染になるので、その脅威は計り知れないといわれている。遺伝子というのは自己を複製する機能を備えているので、汚染された遺伝子がどんどん複製されていくことになるからだ。つまり、今ジワリジワリと広がっているGM作物による遺伝的汚染は、ある瞬間から人間の管理が及ばない次元にまでその植生・個体数が増えた時点で、もう誰にも止められないによる生態系の破壊連鎖が起こっちゃうわけです。それって凄い怖いことなんだ、といっても「へー」といわれるだけに終わってしまうのが悲しい・・・私のチカラ不足です。はい。



ま、そういった観点からもGM作物への規制強化、普及への疑問視などがあがっているのです。まる。