[リミット]

ソリッド・シチュエーションもの。
期待しすぎてツッコミばかり入れてます。




あらすじ
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イラクで民間トラックドライバーとして働くポールは、何者かに襲われ、ひつぎと共に土の中に埋められてしまう。

やがて意識を取り戻したポールは、手元に携帯電話、ライター、ナイフ、ペン、酒があることを知るが、残された空気から推測してタイムリミットが後90分前後ということに気が付いて……。

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yahooの映画情報だと、この状況から「地上への脱出を図る男の奮闘が見もの。」と書いてあるけど、私はこのストーリーの展開や彼の行動で破綻しているところを探すのに奮闘していた。



まず、男の目覚めから始まるのだけど、どのソリッドシチュエーションにあるように、ストーリーが進むにつれて男がどういう状況で土の中に埋められたのかや彼自身の性格やディティール、家族構成などが解っていく。そこはまぁいいとしよう。



ストーリーは、彼が閉じ込められた箱の中に残されたケータイを使って外部との連絡をしながら、彼を取り巻く環境が描かれていく。「彼を取り巻く環境」というのは彼の家族や友人、勤め先、そしてアメリカという国家組織も含まれている・・・そしてたぶん、「政府を皮肉に表現した」描写が映画として『絶妙な描写でつね!』と製作側がいわせたかった第二の部分じゃないのだろうか・・・(第一の部分は、きっと主人公の極限状態の描写だと思う)


またこの映画も釈然としないことが多いの〜、もう何なのかしら。まず、彼を拉致して地中に埋めた犯人が「誘拐のプロ」という設定。。。アメリカ政府がテロリストに身代金なんて払うことは表向きには絶対ないのに、犯人は主人公に身代金を「大使館から払ってもらえ」と頑なに命令する。それならお前らが大使館に連絡すればいいじゃんかwとか思ったり。まぁ、でもたぶんそれしたら足がついてつかまるからしないだろうけども・・・主人公も在イラク米大使館に連絡する気が無いからウケル。その割りに命が惜しいからか、片っ端からアメリカの友人知人と家族、そして国防省、FBIに電話かけるのが、なんとも滑稽でありながら人間ってつまるところそういう行動をするものなのねと思わせる演出。しかし、大使館に連絡する以外の命令は全部犯人の言うとおりに動いているのに、不思議だ。



あと、犯人が主人公に「人質ビデオを撮れ!」と命令するシーンも中途半端すぎる・・・。その「人質ビデオ」の使い方も釈然としないんだよなぁ。なんだろう、この違和感というか掛け違えた感。。。犯人はビデオを使って遠まわしに米政府を威嚇というか、攻撃しているつもりなんだろうけど、youtubeにアップロードとか・・・いやそれで足がついちゃうだろうよ、お前さん、、、と素人は思うわけで・・・。犯人側もケータイをダミーにしたりとかいろいろ頑張ってるのに、動画あげたら一発で見つかると思うんだけどなぁ・・・あぁ、それでも犯人が捕まらないというところが米政府の反誠実な対応の現われとして受け取ってほしいとでも言うのだろうか。どこまで深読みしたらいいの、この映画。





あれもこれもツッコミを入れてしまうのは、たぶん、それだけ心のどこかで期待していたからだと思う。でも犯人たちの言動がキートンが言っていた「誘拐のプロ」とはかけ離れているのだよなぁ。それってたぶん、「過激な武装市民が誘拐してみたのを表現してみました」という感じで描きたかったのかな。表現が中途半端で何がしたかったのかわからない。しかも、劇中で表れる国防省の人質誘拐解放のプロが『彼らはプロだ』なんて主人公に言っちゃうから頭ん中余計に大混乱だよ!



面白さで言ったら中の下ぐらい。もっとゾクゾクさせてほしかったなぁ。最後の終わり方は好きだけど、もっと衝撃的な感じがよかった。この映画の主人公のように死を悟った人間の死は、ソリッドシチュエーションに似合わないと思う。SAWのアダムのように絶叫しながら、CUBEのDV刑事のようにエゴイズムに全力をかけるような、人間の根本にある「生きたい」という欲望をありありと描いて欲しかったなぁ。中盤まではよかったんだけどね〜。


でもこの一回盛り上げて、ガクンと盛り下げるストーリーのもってきかたはスキ。この映画で唯一好きになれた部分かな。



[リミット]
原題:BURIED
公開:2010
監督:ロドリゴ・コルテス