裸足の1500マイル

裸足の1500マイル
オーストラリアの白人至上主義時代に行われていた隔離・同化政策のなかで実際にあった話をもとに製作された映画。


あらすじ
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1931年のオーストラリアでは、先住民アボリジニの混血児を家族から隔離し、白人社会に適応させようとする隔離・同化政策がとられていた。

寄宿舎に収容されたモリーと妹の8歳のデイジーモリーの従妹である10歳のグレイシーはうさぎよけのフェンスだけを頼りに2400km離れた母の元に帰ろうとする。そのあとを追跡人が3人に迫る。


道中さまざまな人に会う3人は、果たして無事に母の元に帰れるのだろうか。

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隔離・同化政策というのは何ぞやという話だが、これはアボリジニの子供を親元から隔離し寄宿舎に移送させ、白人として同化させる計画である。

寄宿舎ではつれてきた子供たちに白人の文化、習慣、言語、宗教を教え込む。そうして見かけはアボリジニでも中身は白人と変わらない人間を作る。

そのころの政府は、アボリジニを白人と結婚させることで混血をつくり、またその子供を白人と結婚させ子供を生ませる・・・というプロセスを繰り返すことで白人に限りなく近い肌の色の混血の子供を増やそうと計画していた。

その計画の一番根底にあって、要だったのが隔離政策だった。


この映画の主人公であるアボリジニ3姉妹は突然施設の人間によって母親の元から隔離されてしまう。


施設に入ったものの、母親の元へ帰りたいという強い思いから3姉妹は脱走、帰路の旅をはじめるのが映画の初めのほうで描かれる。


この映画では当時のアボリジニたちがどのような生き方をしていたのか少しだけ垣間見えることが出来る。白人側につく者、白人の下で召使(という名の奴隷)として働く者、大陸の奥地で慎ましく生活する者・・・



この映画の原題は”Rabbit Proof Fence"、つまりウサギよけフェンスという名なんだよね。オーストラリアでは農業の害になるウサギの侵入を防ぐネットが張ってある。姉妹はそれをたよりに帰るので、映画のタイトルがそうなっている。



日本や中国の歴史って言うと建国からいろんな時代を経て今を振り返るけど、オーストラリアで歴史の授業というとほぼすべてアボリジニとの付き合い方の話しなる。留学時代はそれでちょっとびっくりしたりもした。


実際、今でもアボリジニへの政策はあってそのほとんどが補助になっている。その補助支援のせいでアボリジニ文化にも亀裂が走ったりしている。アボリジニへの食料燃料補助は、フューエルホリック(石油中毒=シンナー中毒)や肥満、糖尿病を引き起こしたりしたり、補助のせいで働かなくても生活できてしまう彼らの社会構造が社会問題でもあったりする。


そうした社会問題を引き起こすまでになってしまった補助支援をするきっかけになったのは、やはりこの白人至上主義に基づくアボリジニ児の隔離・同化政策であったりする。


この話は実話に基づいて製作されたもので、結果として彼女たちは母もとに帰ります。その帰った後の「その後」も映画の中で語られています。


実話がベースになってるとはいえ、まるでドキュメンタリー映画をちょっと脚色したようなそんなリアリティがある映画。ジャンルってどう分けたらいいんだろう。ヒューマンドラマなのか、シリアス(真面目な)映画なのか・・・悩むところです。


幸せや幸福っていうのは押し付けるのではなく、そこに住まう人たちが如何に主体的に生きれるかにかかる。白人のしてきた押し付け至上主義は、彼らにとってキリストからの使命だったのかもしれないけどね。国を立ち上げるのも、政治をするのも、地域活性化も全部共通して繋がるのはそこ。土地に住まう人たちを主体的に能動的に動かし、彼らの幸福を最大限にすることが一番求められることだと思うよ。


オーストラリアのことが知りたいと思ったら、この映画を観てからオーストラリアに行くともっと楽しめるよ。アボリジニの文化を含めてのオーストラリアだからね。



裸足の1500マイル
原題:Rabbit Proof Fence
公開:2002
監督:フィリップ・ノイス